東京高等裁判所 昭和45年(う)2559号 判決
被告人 大場俊賢
〔抄 録〕
所論は、被告人の原判示行為は、脅迫罪の構成要件である害悪の告知に当らないと主張するので按ずるに、原判決挙示の証拠に徴すれば、被告人は原判示日時ころ、原判示道路上において、「返せ樺太北方領土、学生純正同盟行動隊」、「第13福寿丸を忘れるな、学純同委員長大場雅泉」等と記入した荷札を添付した信号炎管および保安炎管計三本をソ連大使館敷地内へ投込んで燃焼させたものであるが、本件と同種の信号炎管は、焔の長さが約二〇センチメートルから約二五センチメートルで、その温度は約一、二〇〇度から一、三〇〇度、燃焼時間が約五分であつて、火薬類取締法の火工品に該当する物であり、また保安炎管は、焔の長さが約一五センチメートルから約二〇センチメートルで、その温度は約一、二〇〇度から一、三〇〇度、燃焼時間が約五分であつて、いずれも危険な物であることが明らかであること、本件信号炎管等の投擲された場所は昼間は大使館職員の子供らの遊び場になつていて、本件当時も大使館員アレクサンドル・ベリコフの妻子が付近におり、本件信号炎管等は、右ベリコフが発見したとき煙を出して燃えていたというのであるから、場合によつては、大使館職員およびその家族等が火傷する危険性があつたこと、犯行の数日前にも大使館構内に瓶や石が投込まれた状況であつたことを認めることができるので、被告人の信号炎管等の投擲行為は、本件脅迫の構成要件である害悪の告知にあたるものといわなければならない
(栗本 小川 藤井)